2016年後半のカンファレンスを振り返る

カンファレンスは、いつも刺激に溢れています。2016年もアジアの各地で、パネルディスカッションやプレゼンテーションの機会に恵まれました。自らのプレゼンテーションを通じて、過去のリサーチ成果を発信するだけでなく、カンファレンス・チェアやパネル・モデレータの役割は、業界ソートリーダーとのインプロビゼーションであり、将来のリサーチトピックスやインサイトテーマを仕込む、貴重な瞬間です。人が出会い、意見を交換し、議論を深める。そのための準備と当日の緊張感は、アナリストの責務であり、醍醐味でもあります。 本稿では、2016年後半の5つのカンファレンスを振り返ります。銀行、保険、証券、ウェルスマネージメントの各業界の議論に共通したキーワードは、引き続き、フィンテック、デジタル、そしてモダナイゼーションでした。
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Insurance, Digitization and Bubbles(7月1日:東京)

保険業界は変革を迫られています。超低金利、新規事業参入者の増加、激化する価格競争、顧客との関り方の急激な変化が、保険会社の商品/ビジネスモデルを揺さぶっています。モノのインターネットやスマートロボットだけではなく、いまやブロックチェーンも保険業界に大きく影響しつつあります。 こうした新しいテクノロジーは、本当に業界を根底から変えてしまうのでしょうか? 仮に変化があるとするならば、いつ、どんな出来事が、どのような順序で起こるのでしょうか? セレント主催の本イベントでは、世界の保険業界におけるデジタル改革の最新トレンドを紹介し、お招きした日本の保険業界を代表するソートリーダーの皆様と、中長期的な視点での将来像を模索しました。
  • 世界の保険業界におけるデジタルトランスフォーメーションの最新トレンド
  • InsurTechが保険業界の未来、ビジネスモデル、事業運営に与える影響
  • 短期、中長期的な視点での展望、業界の未来図
  • 日本におけるInsurTechの現状と展望
Insurance, Digitization and Bubbles
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Asia Anti-Money Laundering Summit713-14日:シンガポール)

アジアにおいても欧米同様に、規制の継続的な改正、最大手の金融機関における規制違反事例など、AMLの運営管理全般を改善する必要性が高まっています。電子取引の爆発的な普及は新たな課題をもたらしており、金融機関が様々な事象をチェックする際に、もはや規制当局や政府公認のブラックリストだけでは不十分な状況にあります。 AMLはまた、海外業務を展開する大手銀行だけのテーマではなく、全金融機関において同様な備えとその効率化が問われる時代となっています。本イベントは、アジアの保険業界を中心としたコミュニティにおいて、AMLとKYCを真正面から討議する場となりました。 セレントからは当日、以下の既刊レポートを中心に、「ユーティリティモデルの隆盛とAI適用」に関する報告を行いました。 Asia Anti-Money Laundering Summit
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Asia Insurance Technology Awards95-6日:シンガポール)

2016年も引き続き、セレントは、AIR の主催する Asia Insurance Technology Awards (AITAs) の審査員を務めました。アジア各地の保険業界における、イノベーションと現代化に関する先進的な取り組みを表彰するこのイベントは、セレントの主催するアワード:セレントモデルインシュアラー と併せ、当社アジア保険部門の2大イベントとなります。 新たなテクノロジー、ビジネスモデルそして業界構造や組織変革への取り組みが、6つアワードカテゴリーにおいて表彰されました。中でも、Best Newcomerに輝いた Everledger(英国)、Digital Transformationを獲得した PetSure(オーストラリア)の両社は、InsureTech時代を象徴する取り組みと賞賛されました。
  • IT Leadership: Liberty Videocon General Insurance
  • Best Insurer, Technology: New China Life Insurance, Max Life Insurance
  • Digital Transformation: AXA Asia, PetSure (Australia)
  • Big Data and Analytics: AXA Hong Kong
  • Best Newcomer: Everledger
  • Innovation: IDBI Federal Life Insurance, Ping An Property & Casualty Insurance Company of China
Asia Insurance Technology Awards
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5th Asia Insurance CIO Technology Summit95-6日:シンガポール)

AITAと同時開催のアジア保険CIOサミットにおいて、キーノートスピーチ「InsurTech & Digital: A Global Round-Up 」を提供しました。 さて、保険会社の存在価値とは何でしょうか?
  • 安心、安全、健康な人生を支援する
  • 企業活動の全てのリスクを担保する
  • 人生の、企業活動の不安とリスクを軽減する仕組みの提供
様々な表現で語られますが、全てに共通することは、「顧客中心」主義。一方で、これまでの金融機関におけるテクノロジー活用の中心命題が、長らく
  • システム化による、人手から機械への代替による合理化、コスト削減 であったことは事実です。
しかし、テクノロジーの進化とその爆発的な普及は、こうして古典的な命題を激変させました。本キーノートでは、情報とテクノロジーを手にしたデジタルな顧客に対峙する現代の金融機関は、
  • 「デジタルな顧客中心」主義であるべき と提唱しました。
また、デジタル世紀の金融機関が遭遇している、急激な業界構造の変化に対して、
  • 「戦略自由度の担保」とそれを実現する「アーキテクチャ」 も提案しました。
5th Asia Insurance CIO Technology Summit
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TradeTech Asia 20161019-20日:シンガポール)

キャピタルマーケットとウェルスマネージメント業界の祭典 TradeTech Asiaは、今年もシンガポールで開催されました。セレントは長年、このイベントのカンファレンス・チェアやモデレータを務めてきました。ウェルスマネージメントにおけるロボアドバイザーの台頭、トレーディングデスクにおけるAlgoからAIへのシフトが鮮明だった2016年は、アジアの機関投資家の方々と、以下のパネルに参加しました。
All Star Panel: How can you use machine learning and artificial intelligence for predictive analysis and accurate analytics?
当日は、セレントのAIフレームワーク:人口知能モデルを披露し、資本市場、資産運用ビジネスにおける、AI活用の現状と展望に関して、以下の事柄に言及しました。
  • トレーディングライフサイクルの最適化におけるAIの役割
  • 投資分析の予測能力や正確性を向上させるAIの適用方法
  • リサーチ:投資分析やポートフォリオ分析におけるAI活用
  • AIとコンプライアンス:不正取引の監視におけるAIの活用
  • 購入か利用か、構築か?:AIにおけるフィンテック企業の可能性
TradeTech Asia 2016  

今春のカンファレンスを振り返る(その2)

本稿では、今春のアジア3都市での6つのカンファレンスを振り返ります。銀行、保険、証券、ウェルスマネージメントの各業界の議論に共通したキーワードは、フィンテック、デジタル、そしてモダナイゼーションでした。

 

Legacy Modernization Seminar (47日:東京)

http://www.celent.com/news-and-events/events/legacy-modernization-seminar

グローバルなITサービスベンダーの主催するコミュニティミーティングで、「レガシーモダナイゼーション」のプレゼンテーションをしました。

昨年セレントが実施したサーベイ結果は、日本の保険業界におけるレガシーシステムの現代化について、以下の示唆をもたらしました。

  1. 現代化の検討は本格化、既に実施ステージに:置換戦略は、新システムへの置換がバージョンアップやラッピングを凌ぎ、置換理由は、コスト、ITスキルや能力との合致、リスク許容度、が主流である。
  2. 置換プロジェクトの進捗は評価から実施段階へ入るも、新たな解決策(SaaS、BPO)の検討は十分とは言えない。
  3. 最大の課題は自社に最適なプログラムの選定にある。
  4. ビジネスケースの検討は不十分:ビジネスケースはプロジェクトの進捗管理ツールに止まり、ライブドキュメントとして機能していない。
  5. 現代化の進展による、ビジネス部門、IT部門の役割変化は、未だ責任分担を変化させるには至っていない。

この現状認識に基づき、カンファレンスでは、以下を議論しました。

  1. レガシーモダナイゼーションのフレームワーク
  2. 組織の優先課題と自社のリスク許容度の掌握
  3. スコープ定義

そしてレガシーの再生産をしないモダナイゼーションのKFSとして、以下を提唱しました。

  • 自動化とその複雑系への適用
  • コアスタンダードの確立と、ローカルバリエーションの許容
  • ソーシングモデルの見直し

ここでもまた、「フィンテック」「デジタル」が共通の話題でしたが、IT部門の最大の課題は、やはり「レガシーモダナイゼーション」にあります。それはITシステムの更新や新技術の導入だけでなく、IT部門の体制やイニシアチブの在り方にも大きく依存します。カンファレンス参加者の問題意識は、「データ移行」「プログラムコンバージョン」「コンフィグレーション」から「クローズド・ブック」のBPOまで、実に多様なテーマに及びました。

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http://tekmonks.com/beta/beta/brochure/FI-Consulting.html

 

Tokyo Financial Information & Technology Summit  (412日:東京)

http://www.celent.com/news-and-events/events/tokyo-financial-information-technology-summit

キャピタルマーケットのトピックスも変化しています。

例年同様、東京金融情報&技術サミットのパネル運営をサポートしました。今年のカンファレンスでは、ウェルスマネージメント、フィンテックを新たなトピックスとして加え、「信託ビジネス」と「ブロックチェーン」のパネルをモデレートしました。

「信託ビジネス」パネルでは、以下のトピックスで議論しました。

変貌する個人金融市場と資産運用ビジネスの現状認識について:

  • 「貯蓄から投資へ」の潮目の変化(NISA、投信、ラップ口座)
  • ゼロ金利の影響
  • ターゲットとするセグメント

個人向け資産運用ビジネスへの取り組みについて:

  • 新チャネルの状況(対面チャネル、非対面チャネル、ハイブリッド)
  • プロセスの改革の度合(分析と自動化の活用度合)
  • オペレーション革新の状況(商品・サービス、IT、組織・体制の革新)

資産運用ビジネスにおけるイノベーションのドライバーと挑戦:

  • テクノロジー活用(チャネル、分析・自動化、商品・サービス)
  • データ活用(投資サポート情報、投資商品データ、投信データ)
  • FinTech活用(組織・体制、新市場とコミュニティの拡大)

日本のリテール証券・信託マーケットにおいても、ウェルスマネージメントビジネスとそこでのテクノロジー活用が重要テーマとなっています。

 

「ブロックチェーン」パネルでは、「資本市場」を中心とした「ブロックチェーン」の可能性、POCへの期待を議論しました。論点は、以下の3点でした。

  • 取引の透明性、コスト削減への効果期待と実現方策
  • 金融サービス事業適用の条件、POCに期待する成果
  • 期待される、ビジネスケース

ブロックチェーンを巡る議論は、「探索」の段階から「実証」の段階に入ったと感じました。また、カンファレンスの議論を通じて、以下の示唆を見出しました。

  • この技術は、多くの市場参加者が共有すべきもの:プライベートもしくは、小規模なコンソーシアムでこの技術を適用しても、そのメリット享受は難しい。
  • この技術は、グローバルに実装すべきもの:グローバルな制度変更を伴う、標準化のイニシアチブのなかでの設計と実装が本来の姿である。ビジネスケースは、国際送金、トレードファイナス、マイクロペイメントなど想定されるが、ビットコイン(の信任が増し)若しくは、新法定通貨が定まれば、金融取引の大半はそれでよく、後は、非金融情報をタグ付するだけで、その多くはXMLの範囲で解決する。
  • この技術は、アプリケーションではなく、プラットフォームの技術:従って、①基礎研究:新プラットプラットフォームの構築と、②応用研究:その上でのアプリケーションの構築作法、とを峻別し、POCの多くは、R&Dとして①を主に、②はサンプル・ユースケース程度であり、制度設計は皆無。多くのベンダー(や金融機関)は、旧態依然として、新標準が定まった後のAP構築方法論及びAP構築から利益を出す構造である。

そこでの課題は、以下の3点に集約出来ます。

  • 透明性:技術の特性として、秘匿性の高い情報の管理には向かない。大半の金融取引は秘匿性が伴い、法改正も必要。
  • 制度設計:大規模金融基盤適用には、制度設計、制度改定が不可避で、個別金融機関にはその動機がない。
  • 技術者の人口:メインフレームからC/S、Web、モバイル、AI&IoTへの変遷と全く同様に、広範な普及には開発者の人口が必要。

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http://www.financialinformationsummit.com/tokyo/jp/static/programme

 

17th Asia Conference on Bancassurance and Alternative Distribution Channels (5月10日:ジャカルタ)

http://www.celent.com/news-and-events/events/17th-asia-conference-bancassurance-and-alternative-distribution-channels

今春2回目のジャカルタでは、このバンカシュランスのカンファレンスに参加し、保険業界におけるデジタル化をセレントの「デジタルフレームワーク」を用いて提唱しました。加えて、InsurTechの動向を、ソーシャルメディアのデータ分析、保険会社以外のデータ収集とその活用、IoTを活用した新たなデータソースの拡充、構造化データ以外の分析ツールの活用について紹介しました。また、銀行と保険会社のレガシーモダナイゼーションについても言及し、自動化と事務処理のSTP化の重要性を述べました。バンカシュランスの文脈においても、銀行、保険会社に跨る事務処理をシンプルにすることが鍵で、プロセスのデジタル化はすなわちコアシステムの現代化を誘導することを提言しました。

カンファレンス・チェアの役割を通じて、全プレゼンテーションを紹介し、質疑応答をモデレートしました。登壇者の顔ぶれは、現地の金融当局、保険業界団体、東南アジアで活躍するグローバル銀行と保険会社、再保険会社の現地法人、そして当地でのデジタルバンキングに商機を見出すテクノロジーベンダーとフィンテック・スタートアップ企業。各社の発表に共通するコンセプトは、デジタルエクスペリエンスが変える銀行と保険会社、そして保険契約者の関係でした。

社会インフラの制約条件は、シンプルな顧客関係を要求します。金融とITのリテラシーが未成熟な地域では、顧客の文脈での推奨や支援が必要とされます。それらを満たすプラットフォームとして、モバイルを中心とした顧客接点が取り組みの中心でした。Financial Inclusion(金融包摂)は、金融当局の強力なバックアップもあり、銀行、保険、そしてテクノロジーの業界にとって、大きな活躍の舞台とみなされます。今回も、アジア新興市場のダイナミズムを大いに実感しました。

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http://www.asiainsurancereview.com/airbanc2016/Programme

 

今春のカンファレンスを振り返る(その1)

カンファレンスは、いつも刺激に溢れています。今春も各地で、パネルディスカッションやプレゼンテーションの機会に恵まれました。自らのプレゼンテーションを通じて、過去のリサーチ成果を発信するだけでなく、カンファレンス・チェアやパネル・モデレータの役割は、業界ソートリーダとのインプロビゼーションであり、将来のリサーチトピックスやインサイトテーマを仕込む、貴重な瞬間です。人が出会い、意見を交換し、議論を深める。そのための準備と当日の緊張感は、アナリストの責務であり、醍醐味でもあります。

本稿では、今春のアジア3都市での6つのカンファレンスを振り返ります。銀行、保険、証券、ウェルスマネージメントの各業界の議論に共通したキーワードは、フィンテック、デジタル、そしてモダナイゼーションでした。

 

Blockchain Business Conference 2016 (121日:ソウル)

http://www.celent.com/ja/news-and-events/events/blockchain-business-conference-2016

セレントを含めて4人のスピーカーが、ブロックチェーンを中心としたフィンテックに関する現状認識と取り組みを発表しました。

ソウル大学ビジネススクールの教授は、ビットコインとブロックチェーンの関連性と違い、ブロックチェーン技術の特長、イノベーションプラットフォームとしてのブロックチェーンへの期待を述べました。大手SIのLG CNSと、フィンテクスタートアップのcoinoneは、自社におけるブロックチェーンへの取り組みと、適用を目論むビジネス分野について、簡易なユースケース・デモを交えて発表しました。セレントからは、フィンテックの背景、ブロックチェーンの本質、金融サービスの行方について、グローバルと日本の立ち位置から報告しました。

参加者は総じて若く、ITのトレンドに敏感で、ブロックチェーンを新たなビジネス機会として捉え、その議論を挑む姿勢が印象に残りました。ソウルにおけるこのブロックチェーンのカンファレンスは、ペイメント分野での新たなサービス創出の意欲が実感出来ました。

本イベントについては、「フィンテックトレンドの昨日」 http://bit.ly/1txsSmD と題してポストしました。

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Celent Analyst and Insight Day  224日:東京)

http://www.celent.com/ja/node/34449

今春のカンファレンスシーズンは、このイベントからスタートしました。

世界各地からセレントのアナリストが東京に集結し、テクノロジーが金融業界の土台をいかに揺さぶっているか、金融機関は新しい現実にいかに適応していくべきか、様々な議論とインサイトを発信しました。「イノベーション」「フィンテック」「ブロックチェーン」をテーマとした3つのセッションで、合計15のプレゼンテーションを披露しました。

イノベーションの手法とベストプラクティス、未来への分岐点 としてのフィンテック、ブームで終わらないブロックチェーンのインパクト。どのテーマも、市場を席巻するメガトレンドですが、着地点や方向性が見出せない議論となりがちです。このカンファレンスを通じてセレントは、フレームワークベースの考察、ベストプラックティスの活用、そして戦略的自由度の確保が重要であると提言しました。

このカンファレンスの前後でも、各社のPOCに関するプレスリリースが相次ぎました。2016年の春、東京での「フィンテック」を巡る議論は、「探索」から「実証」に推移し、先駆者の「ユースケース」や「ビジネスケース」を待望する声が多数聞かれました。

本イベントについても、「セレント アナリスト&インサイト・デー」 http://bit.ly/1T6R5u2 にポストしました。

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Southeast Asia Banking Technology & Innovation Summit 331日:ジャカルタ)

http://www.celent.com/news-and-events/events/southeast-asia-banking-technology-innovation-summit

昨年のビザ条件の緩和は確実に奏功し、インドネシアでのカンファレンス機会が拡大しています。セレントは今春、銀行と保険の業界メディアから招聘を受け、カンファレンスに参加しました。

日本の約5倍の国土に2.6億の人口、イスラム教徒の比率が88%、2005年以降5~6%台の高成長率、2015年一人当たり名目GDP3,362ドル(世界113位)。首都ジャカルタには、アジア新興国市場の縮図があります。治安、交通渋滞、インフラと様々な課題を抱えつつも、そのすべてを事業機会として取り組むダイナミズムを感じました。

このバンキングのカンファレンスでは、銀行業界におけるデジタル化をセレントの「デジタルフレームワーク」を用いて提唱しました。市場の激流を注視し、顧客経験を通じて自社のブランド評価を計測すること。ITとビジネス両面の柔軟性を確保し、デジタル化による具体的な経済価値を追求すること。そして、そのための戦略ロードマップを策定、実行すること。この5点は、セレントの提唱するデジタル戦略の中核です。

また、カンファレンス・チェアの役割を通じて、全プレゼンテーションを紹介し、質疑応答をモデレートしました。登壇者の顔ぶれは、現地の金融当局、南アジアで活躍するグローバル金融機関の現地法人、そして当地でのデジタルバンキングに商機を見出すテクノロジーベンダーとフィンテック・スタートアップ企業。各社の発表に共通するコンセプトは、Financial Inclusion(金融包摂):低所得層の世帯や事業主が、信頼のおける金融機関から、適切な価格で高品質の金融サービスを利用できるようにすること。デジタル技術はそのイネーブラーとして、店舗やATMよりもモバイルがそのメインチャネルとして、大いに議論されました。

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FINOLAB

I recently paid a visit to Finolab, an innovative initiative in Tokyo designed to help support fintech initiatives. Officially dubbed The FinTech Center of Tokyo Finolab, the facility is an incubation office that opened in the Tokyo Bankers Association Building in February 2016. Sponsored by multiple firms (*1), the center is designed to support the launch and growth of start-ups as a hub to facilitate the matching of potential business ventures with companies and prospective investors.

For me, the facility conjured images of Level39 (*2) in London—and I don’t believe that I was the only person who felt that way. The Tokyo location overlooks Wadakura Fountain Park with its fountain and monuments and offers a sprawling view of the two-story picturesque Sakurada Tatsumi Yagura Keep and Imperial palace gardens and greenery. Stretching beyond that is the Kasumigaseki—the administrative heart of Japan. A good view can be essential when it comes to innovation. For fintech start-ups, a good physical location and community can be as essential to getting off the ground as having a good virtual presence.

“Finolab was established with the intention of creating fertile soil for and an environment conducive to fostering world-class financial innovation. It is backed by an enthusiastic cohort of promising fintech start-ups and stakeholders who are committed to spawning innovation and linking it to the existing ecosystem—that is Finolab,” explained Chie Ito, a founder of Finovators and manager of ISID, which is involved in the operation of Finolab. The birth of Finolab in the financial district of Otemachi area seems to aptly symbolize the current state of fintech in Japan today.

 

On the day, Akira Tsuruoka of the company Liquid, which has already taken up residence at Finolab and using it as its registered address, told me a bit about the company’s vision. Liquid is working to offer its Liquid payment service, which harnesses next-generation biometric authentication search engine technology, to obviate the need to carry credit cards or point cards. The Liquid reader (fingerprint reader) can be connected via a USB port to a POS cash register to make possible payment by fingerprint.

Conventionally, the hurdle for fingerprint authentication technology applications has been the time required for fingerprint matching confirmation, however, Liquid has succeeded in overcoming this by accelerating the verification process. Japan’s biometric technology has advanced from being able to confirm the identity of a person to being able to specify a user’s identity. The next area for which there are high expectations is using image processing and the ability to process reams of data across a broader range of biometric identifiers. Learning about Liquid’s technology and cloud-based service offering, I was struck by the possibilities that it has for boldly yet elegantly contributing to solutions for and potentially helping to redefine the very primitive applications of individual biometric authentication in the financial services industry.

 

(*1) Finolab is an endeavor jointly undertaken and backed by Mitsubishi Estate, Dentsu, and Information Services International-Dentsu (ISID). Finolab will be operated with the cooperation of Finovators, a corporation of professionals dedicated to promoting financial innovation. The Finolab will offer services through the finolab.jp website, with Dentsu and ISID responsible for service operations. http://finovators.org/  http://finolab.jp/

(*2) Located in the Canary Wharf financial district of London, Level39 is a fintech accelerator. Celent profiled it after it launched in 2013 in a blog entry. http://www.level39.co/  http://bit.ly/1oLjby7

 

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FINOLAB

FINOLABを訪問しました。FINOLAB(The FinTech Center of Tokyo FINOLAB)は、2016年2月、東京銀行協会ビルに開設されたフィンテック企業のためのインキュベーションオフィス。スタートアップの創業・成長を支援し、企業や投資家などへのプレゼンテーションやマッチングの拠点となるべく、複数企業(*1) のスポンサーシップにより開設されました。

眺望の素晴らしさに、ロンドンのLevel39(*2) を思い浮かべたのは、私だけではないと思います。和田倉噴水公園のモニュメントや大噴水が眼下に広がり、桜田巽櫓から皇居外苑を一望。その先には、日本の中枢、霞が関が展望されます。見通しの良さは、イノベーションに不可欠な要素。バーチャル空間だけでなく、フィジカルなロケーションも、つながるためにはとても重要な要素です。

「『日本に世界最高の金融イノベーションが生まれる土壌、環境、エコシステムを創ろう』。その熱い想いに賛同する有望フィンテックスタートアップやステークホルダーが集い、イノベーションを創発し、エコシステムをつなげる場が、FINOLABです。」FINOVATORSのファウンダーで、FINOLABの運営に携わるISIDの伊藤千恵氏はこう語りました。日本の金融の中心地「大手町」に誕生したこのスペースは、日本のフィンテックシーンの今を象徴するものと感じました。

 

当日は、すでにFINOLABに入居し、その住所に法人登記するリキッドの鶴岡章氏から、同社の取り組みも拝聴しました。同社は、次世代の生体認証検索エンジンを中核に、クレジットカードレス、ポイントカードレスを実現する決済サービス「Liquid」を提供しています。Liquidリーダー(指紋リーダー)を、USBポート経由でレジPOSに加えることで、指紋決済を可能とします。

従来、指紋認証は指紋の突合に要する時間がボトルネックでしたが、同社のテクノロジーは、その高速化に成功しました。日本の生体認証は、『本人確認』から『本人特定』する技術へ進化しました。次に期待される分野は、画像処理と大規模データ処理を通じた、識別対象の拡大です。その技術とサービスの全てをクラウドで提供するリキッドの取り組みに、個人認証といった金融サービスにおいて極めてプリミティブな領域を、大胆に、そして繊細に融解してゆく可能性を感じました。

 

(*1) FINOLABは、三菱地所(株)、(株)電通、(株)電通国際情報サービス(ISID)による3社協業事業。その運営は(社)金融革新同友会FINOVATORS が協力し、ウェブサイトFINOLAB.jp はFINOLAB事業の一環として、(株)電通、(株)電通国際情報サービスが運営している。http://finovators.org/ http://finolab.jp/

(*2) Level39はロンドンの新金融街Canary Wharf にある、フィンテックアクセラレータ拠点。2013年に開設当時の雰囲気は、セレント証券ブログに言及されている。http://www.level39.co/ http://bit.ly/1oLjby7

 

FINOLAB

 

Celent Analyst and Insight Day

Celent analysts and their insights gathered in Tokyo.

The informative conference presentations were followed by a heated discussion with the thought leaders in the financial industry, on the role of the financial services in the future, which should make a big leap forward both locally and globally.

At the conference, the fifteen hottest topics were covered in the three sessions.

 

Session I
Innovation: Countdown to Now

Firms no longer have the luxury of relying on the past or dismissing the seemingly impossible that is being offered in the present—did we ever really think hoverboards, drones, and driverless cars would be a part of our daily lexicon? But how does a financial institution make the transition to be an innovative enterprise? We’ve taken a close look at what Celent research has discovered to be emerging as best practices in financial services innovation – and examine how incumbents are modifying their traditional business practices to respond to the opportunities and threats presented.

  • Organizing for Innovation
    Mike Fitzgerald, Senior Analyst, Insurance, Celent
    Stephen Greer, Analyst, Banking, Celent
  • Holistic Digital
    Dan Latimore, Senior Vice President, Banking, Celent
  • Extreme Digital
    Craig Beattie, Senior Analyst, Insurance, Celent
  • Convergence in Wealth and Asset Management: Quest for $100 Trillion
    Jay Wolstenholme, Senior Analyst, Securities & Investments, Celent

 

Session II
FinTech: The Fork in the Road

The decisions you make today are vital to your firm’s well being tomorrow. Many of those outlandish ideas being bandied about today contain the seeds of where the industry is heading tomorrow. The challenge is which ones are worthy of your limited time and resources. We’ve examined some of today’s trendiest technologies and discuss which ones we think have staying power and which ones are a futuristic fantasy.

  • Insurance Fintech
    Jamie Macgregor, Senior Vice President, Insurance, Celent
  • The Internet of Things, Telematics, Driverless Cars: First an Opportunity, Then a Threat
    Donald Light, Research Director, Insurance, Celent
  • Practical Uses of Emerging Technology in Retail Banking (from Authentication to Helping Customers Live Better Financial Lives)
    Stephen Greer, Analyst, Banking, Celent
  • AI/Machine Learning in Insurance
    Mike Fitzgerald, Senior Analyst, Insurance, Celent
  • AI/Machine Learning in Securities
    David Easthope, Senior Vice President, Securities & Investments, Celent
  • Robo Advisory
    Will Trout, Senior Advisor, Wealth Management, Celent

 

Session III
The Blockchain: Passing Fad or the Next Big Thing?

It seems everywhere you look, there is another mention of the Blockchain, and it appears to be offering a glimpse into the future. Is it a viable, commercial platform or not. We’ve explored how this cutting edge technology is being utilized across Financial Services. We’ve taken an in-depth look at where it is, where we think it’s going and if it’s worth your time and money. We’ve studied how others are utilizing this futuristic tool and what you need to be thinking and doing in order to ensure you won’t be passed over.

  • The Future of Blockchain and Payments
    Zilvinas Bareisis,
  • Blockchain in Banking
    Patty Hines, Senior Analyst, Banking, Celent
    Jim O'Neill, Senior Analyst, Banking, Celent
  • Blockchain in Insurance
    Jamie Macgregor, Senior Vice President, Insurance, Celent
  • Blockchain and Smart Contracts in Securities
    Brad Bailey, Research Director, Securities & Investments, Celent
  • Distributing Risk with Digital Assets
    David Easthope, Senior Vice President, Securities & Investments, Celent

 

Afterwards we interviewed the thought leaders individually, where we continuously focused on the financial industry in the future.

  • What we should do…
    – Investment and Creation of business opportunities
    – Elimination of mismatch between supply and demand
    – Implementation of new technology in the context of new architecture
  • What we shouldn’t…
    – Reproduction of legacy
    – Competition for market share
    – Monopolization of business and technology

 

To become what we envisage, the financial service industry should share and collaborate with other industries. As long as it remains a monopolistic industry, it won’t be able to catch up with changes rapid development of technology is bringing about.

In this FinTech era, consumers have high expectations for far better services.
It seems that the competitors are not your industry peers but outsiders.
They could be YouTube, Ritz-Carlton, Google or Amazon.com. They all know potential customers’ needs and provide their services based on them. Social network services, which are non-exclusive and user-friendly, also could be another rival.

Whether we can meet the expectations or not will be the key.

Stay tuned for forthcoming Celent reports.

 

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セレント アナリスト&インサイト・デー

早春の東京に、セレントのアナリストとインサイトが集結しました。

カンファレンスでのプレゼンテーションに加え、日本の金融業界ソートリーダとの議論では、日本で、アジアで、そしてグローバルに飛躍する金融サービスの未来図を大いに語りました。

カンファレンスでは、3つのセッションを通じて、15本のトピックスについて、最旬なプレゼンテーションを展開しました。

 

セッション1:イノベーションへのカウントダウン

もはや、過去の栄光に安穏とする組織は存続出来ません。ドローンや自動運転車との日常を、誰が予想したでしょうか?全く新しい時代の幕開けを、金融機関がイノベーティブな組織として生まれ変わる機会とするために、セレントは「金融機関のイノベーション」を継続的にリサーチしています。劇的な環境変化をビジネス機会として活用するために、セレントがグローバルなリサーチの中で見出した「イノベーションのベストプラクティス」を披露しました。

 

セッション2:フィンテック 未来への分岐点

今日の決断の確からしさが、明日のビジネスの成功を導きます。しかし、限られた時間の中で情報を取捨選択し、正しい判断を導くことは容易ではありません。業界を飛び交う斬新で奇抜なアイディアの中には、将来の方向性と成功を決定づける「種」が混在しますが、限られた時間とリソースを投入する価値のある種なのかを見極めることが課題です。フィンテックの最新テクノロジーの中から、どの「種」に将来性があり、どの「種」が幻想に終わるのか、セレントのインサイトを発信しました。

 

セッション3:ブロックチェーン 一時のブームか現実か

「ブロックチェーン」という言葉に、業界の未来が投影されているようです。果たして、本当に実用的なプラットフォームなのか、そしてその用途と適用方法は? 金融機関は、この最先端テクノロジーにどのように取り組んでいるか、先駆者たちの取り組みに何を学ぶか? 銀行、保険、決済サービス、キャピタルマーケットにおける、その現状と今後の見通しを分析し、時間と資金を投じる価値がある分野を検証しました。

  • ブロックチェーンと決済の将来像
    ジルビナ・バレイシス  シニア・アナリスト バンキング
  • バンキングにおけるブロックチェーン2.0
    パトリシア・ヘインズ  シニア・アナリスト バンキング
    ジェームス・オニール  シニア・アナリスト  バンキング
  • 保険におけるブロックチェーン:どこにどのような影響を及ぼすか?
    ジェイミー・マクレガー  シニア・バイス・プレジデント  保険
  • 資本市場におけるブロックチェーンとスマートコントラクト
    ブラッド・ベイリー  リサーチ・ディレクター  証券
  • デジタル資産におけるリスク分散:分散型帳簿テクノロジーによるグローバル・システミック・リスクの軽減
    デビッド・イーストホープ  シニア・バイス・プレジデント  証券

 

個別に面談した、日本の業界ソートリーダとの議論では、引き続き、「金融の未来図」を提唱しました。

  • 何をすべきか?
    – 投資と事業機会の活用:イノベーション組織とリーダーシップの確立
    – 需要と供給のミスマッチを発掘:不便を我慢しない「新世代の声」を最大限活用
    – 新テクノロジーは新アーキテクチャの下で:デジタルテクノロジーがネットワーク効果を加速し、APIを司るプラットフォーマーこそが、新たな潮流を生み出す
  • 何をすべきでないか?
    – レガシーモデルの再生産:フィンテック活用とレガシーモダナイゼーションの同時進行、新サービス、新システムに加え、新たなソーシングモデルの考慮が必要
    – 旧市場の争奪戦:コスト競争を回避するためには、競争の軸を変え、新セグメントに向けた新たなバリュープロポジションを創出する
    – 事業とテクノロジーの独占:フィンテックのビジネスモデルは、多くの「共有」で成り立ち、それは市場や顧客のみならず、事業やテクノロジーすら惜しげもなく「共有」

 

未来図は、金融が特別な、独占的なサービスから、企業活動や消費生活と融合し、金融以外の情報や活動との区分が無くなることを前提とすべきと考えます。フィンテックの時代、金融サービス利用者の期待は高揚を続けています。サービスを競うべき相手は、どうやら、金融業界の外に、それは、ユーチューブやリッツ・カールトンの顧客認知、グーグルやアマゾンの顧客行動予知や優先顧客対応、全てのSNSが展望するサービスの可視化とシンプルなインタラクションかもしれません。その期待に応えることが、未来図における羅針盤となりましょう。

近刊のセレントレポートに、どうぞご期待下さい。

 

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From the Celent Innovation Forum, Tokyo

At Celent we have been focusing on financial services technology since our inception. Now of course all eyes are focused on fintech, which we might inversely call the use of technology to disrupt (traditional) financial services. Investment in fintech startups is significant, and the financial markets involved are huge – US$218 trillion annually in the capital markets alone. Celent recently held our latest fintech event in Tokyo to a full house, an indication of the intense interest in fintech in the Japanese market. The day consisted of two Celent presentations on fintech in the retail and institutional securities industries, followed by a discussion panel. Celent senior analyst John Dwyer presented on blockchain technology and its potential use across capital markets. Smart contracts powered by this technology could conceivably replace existing means of executing market transactions, and by enabling direct ownership might displace custodians and other intermediaries. As if this weren’t food for thought enough, governments including the US and UK are taking a serious look at putting the dollar and the pound on blockchains. Talk about fundamental disruption! Senior analyst Will Trout provided an analysis of how automated advice (robo advisory) is reshaping the wealth management industry. After the financial crisis many individuals quite naturally want to manage their assets themselves, but also require investment advice. Robo advisory, which perfectly suits the self-service, mobile lifestyle, is an answer to this dilemma. SoftBank, Nomura Asset Management and The Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ joined the panel discussion, bringing their respective views on cognitive computing; the potential of fintech to lure Japan’s famously reticent retail segment to participate in the markets; and how to mobilize a large organization for innovation. A fundamental question about fintech is who will ultimately derive value from these innovations: fintech startups; technology giants like Alibaba and Google; or the incumbent financial institutions? Due partly to the regulatory stance, in Japan more than in most markets financial institutions may be in the best position to end up in the winner’s box. Only time will tell, for Japan and for markets across the globe, but you can rely on Celent to continue to provide our clients with insights in the rapidly developing world of fintech.

On Innovation

Celent held our most recent Innovation event in Singapore the last week of November, following similar events in New York, Boston, Toronto, Tokyo, London, and, most recently, San Francisco. Most of Celent’s work is focused on specific financial industry verticals, but Innovation is a topic that transcends industry barriers, and so—by design—do many of our Innovation events.

In Singapore we had representation from the entire financial services spectrum—banks, credit cards, insurers, capital markets firms and exchanges. We presented some of Celent’s recent thinking on innovation, much of it from our new innovation survey. But the main event was a peer discussion between the participants themselves.

It was one of the more lively discussions I’ve seen. We set aside two hours for the peer discussion, and it went by in a flash. Participants jostled to get their say in, and the session ended with the feeling that it could have gone several hours more. I think one of the keys was that there were a lot of different types in the room: the abovementioned full spectrum of FIs, from both the business and IT side, and even from compliance.

Everyone was naturally interested in how their “colleagues across the aisles” looked at innovation, how far each had come in achieving it, and what their technology, operational and cultural approaches were—or were not. Participants brimmed with on-the-spot case studies of initiatives at their firms. This was also refreshingly unusual, since firms are often reticent to divulge competitive information and “secret sauces.”

I think the reason for this relatively high level of enthusiasm lies in the industry’s realization that innovation is crucial to long-term success–and considering the rapidly expanding number of disintermediators, and the remarkable success of some of them, maybe even needed for short-term survival.