今春のカンファレンスを振り返る(その2)

本稿では、今春のアジア3都市での6つのカンファレンスを振り返ります。銀行、保険、証券、ウェルスマネージメントの各業界の議論に共通したキーワードは、フィンテック、デジタル、そしてモダナイゼーションでした。

 

Legacy Modernization Seminar (47日:東京)

http://www.celent.com/news-and-events/events/legacy-modernization-seminar

グローバルなITサービスベンダーの主催するコミュニティミーティングで、「レガシーモダナイゼーション」のプレゼンテーションをしました。

昨年セレントが実施したサーベイ結果は、日本の保険業界におけるレガシーシステムの現代化について、以下の示唆をもたらしました。

  1. 現代化の検討は本格化、既に実施ステージに:置換戦略は、新システムへの置換がバージョンアップやラッピングを凌ぎ、置換理由は、コスト、ITスキルや能力との合致、リスク許容度、が主流である。
  2. 置換プロジェクトの進捗は評価から実施段階へ入るも、新たな解決策(SaaS、BPO)の検討は十分とは言えない。
  3. 最大の課題は自社に最適なプログラムの選定にある。
  4. ビジネスケースの検討は不十分:ビジネスケースはプロジェクトの進捗管理ツールに止まり、ライブドキュメントとして機能していない。
  5. 現代化の進展による、ビジネス部門、IT部門の役割変化は、未だ責任分担を変化させるには至っていない。

この現状認識に基づき、カンファレンスでは、以下を議論しました。

  1. レガシーモダナイゼーションのフレームワーク
  2. 組織の優先課題と自社のリスク許容度の掌握
  3. スコープ定義

そしてレガシーの再生産をしないモダナイゼーションのKFSとして、以下を提唱しました。

  • 自動化とその複雑系への適用
  • コアスタンダードの確立と、ローカルバリエーションの許容
  • ソーシングモデルの見直し

ここでもまた、「フィンテック」「デジタル」が共通の話題でしたが、IT部門の最大の課題は、やはり「レガシーモダナイゼーション」にあります。それはITシステムの更新や新技術の導入だけでなく、IT部門の体制やイニシアチブの在り方にも大きく依存します。カンファレンス参加者の問題意識は、「データ移行」「プログラムコンバージョン」「コンフィグレーション」から「クローズド・ブック」のBPOまで、実に多様なテーマに及びました。

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http://tekmonks.com/beta/beta/brochure/FI-Consulting.html

 

Tokyo Financial Information & Technology Summit  (412日:東京)

http://www.celent.com/news-and-events/events/tokyo-financial-information-technology-summit

キャピタルマーケットのトピックスも変化しています。

例年同様、東京金融情報&技術サミットのパネル運営をサポートしました。今年のカンファレンスでは、ウェルスマネージメント、フィンテックを新たなトピックスとして加え、「信託ビジネス」と「ブロックチェーン」のパネルをモデレートしました。

「信託ビジネス」パネルでは、以下のトピックスで議論しました。

変貌する個人金融市場と資産運用ビジネスの現状認識について:

  • 「貯蓄から投資へ」の潮目の変化(NISA、投信、ラップ口座)
  • ゼロ金利の影響
  • ターゲットとするセグメント

個人向け資産運用ビジネスへの取り組みについて:

  • 新チャネルの状況(対面チャネル、非対面チャネル、ハイブリッド)
  • プロセスの改革の度合(分析と自動化の活用度合)
  • オペレーション革新の状況(商品・サービス、IT、組織・体制の革新)

資産運用ビジネスにおけるイノベーションのドライバーと挑戦:

  • テクノロジー活用(チャネル、分析・自動化、商品・サービス)
  • データ活用(投資サポート情報、投資商品データ、投信データ)
  • FinTech活用(組織・体制、新市場とコミュニティの拡大)

日本のリテール証券・信託マーケットにおいても、ウェルスマネージメントビジネスとそこでのテクノロジー活用が重要テーマとなっています。

 

「ブロックチェーン」パネルでは、「資本市場」を中心とした「ブロックチェーン」の可能性、POCへの期待を議論しました。論点は、以下の3点でした。

  • 取引の透明性、コスト削減への効果期待と実現方策
  • 金融サービス事業適用の条件、POCに期待する成果
  • 期待される、ビジネスケース

ブロックチェーンを巡る議論は、「探索」の段階から「実証」の段階に入ったと感じました。また、カンファレンスの議論を通じて、以下の示唆を見出しました。

  • この技術は、多くの市場参加者が共有すべきもの:プライベートもしくは、小規模なコンソーシアムでこの技術を適用しても、そのメリット享受は難しい。
  • この技術は、グローバルに実装すべきもの:グローバルな制度変更を伴う、標準化のイニシアチブのなかでの設計と実装が本来の姿である。ビジネスケースは、国際送金、トレードファイナス、マイクロペイメントなど想定されるが、ビットコイン(の信任が増し)若しくは、新法定通貨が定まれば、金融取引の大半はそれでよく、後は、非金融情報をタグ付するだけで、その多くはXMLの範囲で解決する。
  • この技術は、アプリケーションではなく、プラットフォームの技術:従って、①基礎研究:新プラットプラットフォームの構築と、②応用研究:その上でのアプリケーションの構築作法、とを峻別し、POCの多くは、R&Dとして①を主に、②はサンプル・ユースケース程度であり、制度設計は皆無。多くのベンダー(や金融機関)は、旧態依然として、新標準が定まった後のAP構築方法論及びAP構築から利益を出す構造である。

そこでの課題は、以下の3点に集約出来ます。

  • 透明性:技術の特性として、秘匿性の高い情報の管理には向かない。大半の金融取引は秘匿性が伴い、法改正も必要。
  • 制度設計:大規模金融基盤適用には、制度設計、制度改定が不可避で、個別金融機関にはその動機がない。
  • 技術者の人口:メインフレームからC/S、Web、モバイル、AI&IoTへの変遷と全く同様に、広範な普及には開発者の人口が必要。

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http://www.financialinformationsummit.com/tokyo/jp/static/programme

 

17th Asia Conference on Bancassurance and Alternative Distribution Channels (5月10日:ジャカルタ)

http://www.celent.com/news-and-events/events/17th-asia-conference-bancassurance-and-alternative-distribution-channels

今春2回目のジャカルタでは、このバンカシュランスのカンファレンスに参加し、保険業界におけるデジタル化をセレントの「デジタルフレームワーク」を用いて提唱しました。加えて、InsurTechの動向を、ソーシャルメディアのデータ分析、保険会社以外のデータ収集とその活用、IoTを活用した新たなデータソースの拡充、構造化データ以外の分析ツールの活用について紹介しました。また、銀行と保険会社のレガシーモダナイゼーションについても言及し、自動化と事務処理のSTP化の重要性を述べました。バンカシュランスの文脈においても、銀行、保険会社に跨る事務処理をシンプルにすることが鍵で、プロセスのデジタル化はすなわちコアシステムの現代化を誘導することを提言しました。

カンファレンス・チェアの役割を通じて、全プレゼンテーションを紹介し、質疑応答をモデレートしました。登壇者の顔ぶれは、現地の金融当局、保険業界団体、東南アジアで活躍するグローバル銀行と保険会社、再保険会社の現地法人、そして当地でのデジタルバンキングに商機を見出すテクノロジーベンダーとフィンテック・スタートアップ企業。各社の発表に共通するコンセプトは、デジタルエクスペリエンスが変える銀行と保険会社、そして保険契約者の関係でした。

社会インフラの制約条件は、シンプルな顧客関係を要求します。金融とITのリテラシーが未成熟な地域では、顧客の文脈での推奨や支援が必要とされます。それらを満たすプラットフォームとして、モバイルを中心とした顧客接点が取り組みの中心でした。Financial Inclusion(金融包摂)は、金融当局の強力なバックアップもあり、銀行、保険、そしてテクノロジーの業界にとって、大きな活躍の舞台とみなされます。今回も、アジア新興市場のダイナミズムを大いに実感しました。

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http://www.asiainsurancereview.com/airbanc2016/Programme

 

今春のカンファレンスを振り返る(その1)

カンファレンスは、いつも刺激に溢れています。今春も各地で、パネルディスカッションやプレゼンテーションの機会に恵まれました。自らのプレゼンテーションを通じて、過去のリサーチ成果を発信するだけでなく、カンファレンス・チェアやパネル・モデレータの役割は、業界ソートリーダとのインプロビゼーションであり、将来のリサーチトピックスやインサイトテーマを仕込む、貴重な瞬間です。人が出会い、意見を交換し、議論を深める。そのための準備と当日の緊張感は、アナリストの責務であり、醍醐味でもあります。

本稿では、今春のアジア3都市での6つのカンファレンスを振り返ります。銀行、保険、証券、ウェルスマネージメントの各業界の議論に共通したキーワードは、フィンテック、デジタル、そしてモダナイゼーションでした。

 

Blockchain Business Conference 2016 (121日:ソウル)

http://www.celent.com/ja/news-and-events/events/blockchain-business-conference-2016

セレントを含めて4人のスピーカーが、ブロックチェーンを中心としたフィンテックに関する現状認識と取り組みを発表しました。

ソウル大学ビジネススクールの教授は、ビットコインとブロックチェーンの関連性と違い、ブロックチェーン技術の特長、イノベーションプラットフォームとしてのブロックチェーンへの期待を述べました。大手SIのLG CNSと、フィンテクスタートアップのcoinoneは、自社におけるブロックチェーンへの取り組みと、適用を目論むビジネス分野について、簡易なユースケース・デモを交えて発表しました。セレントからは、フィンテックの背景、ブロックチェーンの本質、金融サービスの行方について、グローバルと日本の立ち位置から報告しました。

参加者は総じて若く、ITのトレンドに敏感で、ブロックチェーンを新たなビジネス機会として捉え、その議論を挑む姿勢が印象に残りました。ソウルにおけるこのブロックチェーンのカンファレンスは、ペイメント分野での新たなサービス創出の意欲が実感出来ました。

本イベントについては、「フィンテックトレンドの昨日」 http://bit.ly/1txsSmD と題してポストしました。

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Celent Analyst and Insight Day  224日:東京)

http://www.celent.com/ja/node/34449

今春のカンファレンスシーズンは、このイベントからスタートしました。

世界各地からセレントのアナリストが東京に集結し、テクノロジーが金融業界の土台をいかに揺さぶっているか、金融機関は新しい現実にいかに適応していくべきか、様々な議論とインサイトを発信しました。「イノベーション」「フィンテック」「ブロックチェーン」をテーマとした3つのセッションで、合計15のプレゼンテーションを披露しました。

イノベーションの手法とベストプラクティス、未来への分岐点 としてのフィンテック、ブームで終わらないブロックチェーンのインパクト。どのテーマも、市場を席巻するメガトレンドですが、着地点や方向性が見出せない議論となりがちです。このカンファレンスを通じてセレントは、フレームワークベースの考察、ベストプラックティスの活用、そして戦略的自由度の確保が重要であると提言しました。

このカンファレンスの前後でも、各社のPOCに関するプレスリリースが相次ぎました。2016年の春、東京での「フィンテック」を巡る議論は、「探索」から「実証」に推移し、先駆者の「ユースケース」や「ビジネスケース」を待望する声が多数聞かれました。

本イベントについても、「セレント アナリスト&インサイト・デー」 http://bit.ly/1T6R5u2 にポストしました。

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Southeast Asia Banking Technology & Innovation Summit 331日:ジャカルタ)

http://www.celent.com/news-and-events/events/southeast-asia-banking-technology-innovation-summit

昨年のビザ条件の緩和は確実に奏功し、インドネシアでのカンファレンス機会が拡大しています。セレントは今春、銀行と保険の業界メディアから招聘を受け、カンファレンスに参加しました。

日本の約5倍の国土に2.6億の人口、イスラム教徒の比率が88%、2005年以降5~6%台の高成長率、2015年一人当たり名目GDP3,362ドル(世界113位)。首都ジャカルタには、アジア新興国市場の縮図があります。治安、交通渋滞、インフラと様々な課題を抱えつつも、そのすべてを事業機会として取り組むダイナミズムを感じました。

このバンキングのカンファレンスでは、銀行業界におけるデジタル化をセレントの「デジタルフレームワーク」を用いて提唱しました。市場の激流を注視し、顧客経験を通じて自社のブランド評価を計測すること。ITとビジネス両面の柔軟性を確保し、デジタル化による具体的な経済価値を追求すること。そして、そのための戦略ロードマップを策定、実行すること。この5点は、セレントの提唱するデジタル戦略の中核です。

また、カンファレンス・チェアの役割を通じて、全プレゼンテーションを紹介し、質疑応答をモデレートしました。登壇者の顔ぶれは、現地の金融当局、南アジアで活躍するグローバル金融機関の現地法人、そして当地でのデジタルバンキングに商機を見出すテクノロジーベンダーとフィンテック・スタートアップ企業。各社の発表に共通するコンセプトは、Financial Inclusion(金融包摂):低所得層の世帯や事業主が、信頼のおける金融機関から、適切な価格で高品質の金融サービスを利用できるようにすること。デジタル技術はそのイネーブラーとして、店舗やATMよりもモバイルがそのメインチャネルとして、大いに議論されました。

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Mobile Payments in Southeast Asia

With the rapid growth of smartphone penetration in Southeast Asia, e-commerce and mobile commerce is one of the hottest issues in the region. Not only local players but also global e-commerce players have entered into the region to expand their business. However, a number of Southeast Asian countries still have low banking account penetration rates, hence people may not have access to payment methods for e-commerce and mobile commerce. Mobile payments may be one of the solutions for e-commerce payment. With the growing popularity of e-commerce and m-commerce, mobile payments is receiving more attention than before. Not only global mobile payments players such as PayPal but also local players like MOL, Fasspay, 2C2P, Smart Money, and GCash operate business in Southeast Asia. Some Southeast Asian countries still have a relatively high level of unbanked population but mobile payments is rapidly being accepted in the region because smartphone penetration rates are growing much faster than bank account penetration rates.  Also, people can hold a mobile payments account without a banking account at some mobile payments services. However, there are some obstacles to the future growth of mobile payments in Southeast Asia. A number of people are not well aware of mobile payments services, hence mobile payments players should invest more into marketing activities, although investment in infrastructure and equipment is also important. A number of payments players are considering entering into the Southeast Asian mobile payments market, but they may face difficulties to set up their business in the region. Each country has different regulations, telecommunications infrastructure, payments infrastructure and financial environment. Players who consider entering into the market should develop strategies to fit each country’s conditions. Celent believes that mobile payments in Southeast Asia will grow strongly for the next few years because the infrastructure is already in hand and smartphone penetration is still growing swiftly. Celent will keep an eye on this trend and update the trends in upcoming reports and blogs.