「岩盤」規制解除に想うこと(その3)

政府の掲げる「岩盤」規制(bedrock regulations)改革に反して、法律や制度以外にも、成長戦略の妨げとなる「岩盤」が存在する。

本稿では、こうした「岩盤」規制解除を巡る様々な議論を通じて、イノベーション機会を探る。

 

時代遅れとなった「岩盤」

日本の金融市場には、時代遅れとなった「岩盤」も存在する。

信用金庫は1951年に制定された信用金庫法にもとづく会員の出資による地域金融機関である。営業地域は一定の地域に限定され、中小企業ならびに個人のための専門金融機関とされる。大企業や営業地域外の企業・個人には融資ができないという制限があり、これは「地域で集めた資金を地域の中小企業と個人に還元することで、地域社会の発展に寄与する」という設立目的によるものである。こうした背景を持つ信用金庫業界においても、提携や合併が相次ぐ。
現在、日本全国には約270の金庫が存在し、全金庫の平均預金残高は金庫当たり5,000億円程度、貸出金は3,000億円程度であり、地方銀行を凌駕する規模の大規模信用金庫も存在する。

  • 組み合せ
    2015年1月に発表された、大垣信用金庫と西濃信用金庫の合併は、「5年後、10年後の経営戦略を考えた。人口減少、市場縮小を見据えた前向きな合併」との両金庫発表(1) 通り、合併後の規模は預金量で7千億円と中堅並みだが、高い自己資本比率に注目すべきである。大垣が12%台、西濃は15%台という優良な信金同士の組み合せは、単独でも生き残れる信金が、より戦略的に動き、地域シェアの維持向上と、一層の規模の経済を狙ったものと解せる。岐阜県は、十六銀行(資金量5兆円)、大垣共立銀行(4.2兆円)、岐阜信用金庫(2.1兆円)と優れた地域金融機関が多く、全国有数のリテール金融激戦地。業界の将来動向を写す合併とみなされ得る。
  • アウトルック
    適切な規模と健全な経営内容を持つ信金同士が戦略的な提携・合併を経て、適切な数の組織が生き残るとの見方が支配的であろう。米国のクレジットユニオン業界(2) 同様に、存続のためのバーは更に高まり、既に都市部を中心に、2兆円規模を超える大手信金が多数誕生している。今後は、規模と健全性、効率性に加え、信金ならではのニッチなサービスを提供し、ローカルなニーズを満たす戦略が不可欠と想定される。
  • 課題と戦略
    効率性の観点から、コア・システムはその大部分が各地の共同センターシステムに加盟し、自営ではない。コストやリソースの課題は解決されるが、ユニークな商品・サービス提供において、ITを活用する際に足かせとなりかねない。またこれまでは、地域を越えた提携や合併は、制度上も障壁があった。ここに、旧態依然とした「岩盤」が存在する。制度に守られた業態と言えるかもしれない。しかし、最大の困難性は人的なリソースにあろう。系統金融として、上位組織(信金中金、全信連)の戦略的なイニシアチブが期待される。

戦略的な立ち位置を求めたユニークな提携・合併戦略が待望される。例えば、
路面店舗や職員の渉外活動、地域社会に強い信用金庫と、ネットや通信販売、全国規模のマスマーケティングに強いネット専業(銀行、保険、証券)が組み戦略的なO2O(Online to Offline)チャネル展開やオムニチャネル(Omnichannel)マーケティングを実現すれば、メガバンク、メガ保険との立ち位置の違いからユニークなサービスが展望され、少子高齢化、地方経済の衰退が叫ばれる中で、新たな金融デリバリーモデルが展望されよう。その際のKFSは、テクノロジーの活用と新たなリソース、特にマーケティングノウハウとなるはずだ。

 

(1) 合併趣意書 (大垣信金、西濃信金)

http://www.seishin-bk.co.jp/pdf/news/news_0298.pdf

(2) 米国のクレジットユニオン業界からの示唆は、下記セレントレポートなどに詳しい。

米クレジットユニオン再編の最新動向

http://www.celent.com/ja/reports/32987