テレマティクス保険と、日本の保険会社の事業戦略

日本市場におけるテレマティクス保険に注目する。
大手損害保険会社において、英自動車保険の買収(1) に引き続き、走行距離連動保険の発売(2) が発表された。

セレントはこれまで、欧州市場での動向とその分析を通じて、
テレマティクス技術の普及と、その技術を活用したテレマティクス保険は、伝統的な自動車保険事業(テレマティック保険以外の自動車保険)における、

  • 「問題ある」ドライバー・プールの増加
  • 自動車保険事業におけるコストベースの増加
  • 自動車保険金請求頻度と金額の増加
    – 判別が困難な保険金詐欺の増加
    – 結果として、保険料の値上げ
  • 可能性として、伝統的な自動車保険契約金額と契約者の減少

などをもたらすとの仮説を立案し、提言(3)している。

一方で、これらのインパクトは、国や地域、自動車の運転に関わる文化や慣習に大きく依存する。すなわち、

  • 一市場におけるテレマティックス保険の隆盛が、他の市場にそのまま伝播しない
  • 一国の伝統的な自動車保険事業の衰退は、そのまま隣国における衰退につながらない

従って、自動車文化や環境の違いを踏まえた、グローバルインパクトの考察が必要である。

 

これらを踏まえ、日本の保険業界に対して、以下の3点を提言する。

  1. モニタリング:
    テクノロジーの普及により、被保険者の損害の変化をどのようにモニタリングするか?
    自社の組織内のどの部門が担当するか?
    >>>全社的リスク管理部門、保険計理部門、商品開発部門、それらを横断する部門でのモニタリングが重要である。
  2. アナリティクス:
    次世代のテレマティックスデータはどのようなものになるのか?
    テレマティックスデータはドライビングそのものを向上させるか?
    衝突防止装置や交通違反自動取締装置から粒度の高いデータを回収、分析、利用する方法はあるか?
    >>>これらのテクノロジーは、保険商品開発において、新たな種類のデータや分析手法を提供し、保険料率設定や保険引受査定などに大きな変化をもたらす。
  3. ストラテジー:
    各業務部門で検討すべき課題か?
    主要な取り組み(商品設計、保険料率の設定、営業、カバー地域拡大など)への影響は?
    コラボレーションすべき他業態のパートナー(自動車、ネットワーク、通信)は?
    >>>今年、来年の事業計画、そして中長期の事業戦略への反映が肝要。

 

Fig1. テレマティクス・インフラと多彩なサービス提供

テレマティクス

(1) 英国テレマティクス自動車保険の大手Box Innovation Group 社の株式取得(MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社)
http://www.ms-ad-hd.com/news_topics/pdf/141223_BIG_hd.pdf

(2) 最先端のテレマティクス技術を活用した自動車保険「つながる自動車保険」新発売(あいおいニッセイ同和損害保険)
http://www.aioinissaydowa.co.jp/corporate/about/news/news_dtl.aspx?news_id=2015020500238&cate_id=02

(3) テレマティクスに関するセレントレポートの推奨

テレマティクス大実験: 注目のイノベーションシリーズ
–  http://www.celent.com/ja/reports/31840
ウェビナー:テレマティクスと利用ベース自動車保険:多少のリスクか多大なリスクか
–  http://www.celent.com/ja/reports/31607
中国保険市場におけるテレマティクスの可能性
–  http://www.celent.com/ja/reports/31631
あるシナリオ:交通事故が(ほぼ)なくなったら自動車保険は
–  http://www.celent.com/ja/reports/30021
テレマティクスに基づく保険:その時代がようやく到来したか
–  http://www.celent.com/ja/reports/29538

 

Eiichiro Yanagawa About Eiichiro Yanagawa

Eiichiro Yanagawa is a senior analyst with Celent's Asian Financial Services group and is based in the firm’s Tokyo office. His research focuses on IT strategy issues in the Japanese and Asian banking and financial industries. His recent research has included core banking systems, ATMs, anti-money laundering technology, electronic trading, document management, IT spending trends, and business process outsourcing. Eiichiro's consulting experience includes development of bank IT strategies, thin client / desktop virtualization to support business continuity, evaluation of data centers for hosting core systems, and vendor selection of AML, risk management, and other technologies.

Speak Your Mind

*