「岩盤」規制解除に想うこと(その1)

2014年12月に発足した第3次安倍政府は、「日本経済再生本部」において日本経済の再生に向けた基本方針を発表 した(1)。 そこでは、「農業、雇用、医療、エネルギー等のいわゆる岩盤規制(bedrock regulations)に対して、一歩たりとも後退することなく改革を進め、新たな市場とビジネスチャンスを生み出していく。」と明言している。

岩盤規制は、省庁、行政機関や業界団体などが改革に反対し、緩和や撤廃が容易にできない規制をさす。1980年代以降、経済成長の観点から多様な分野で規制緩和が行われてきた中で、この「岩盤」規制だけは既得権益を持つ関係者の強い反対にあって、問題解決が長年後回しにされてきたといわれる。

「道路運送法」「薬事法」「医師法」「食品衛生法」「農地法」「健康保険法」「社会福祉法」「電波法」「労働者派遣法」などがその議論の対象とされるが、法律や制度以外にも、成長戦略の妨げとなる「岩盤」が存在する。

本稿では、この「岩盤」規制解除を巡る様々な議論を通じて、イノベーション機会を探る。

 

雇用市場の制度改革案

日本市場の、「岩盤」規制解除が続く。

先の農業分野、系統金融分野における、全国農業協同組合中央会(JA全中)の改革(2) に続き、全産業に関わる、雇用市場の制度改革案(3) が報道された。

グローバル市場は新たな生産性の大競争時代に突入している。そこでは、デジタル技術活用による業務プロセスの自動化、セルフサービス化が推進され、デジタル化が困難な、知的で自律的な活動のみが徹底的に追求されるようになり、従来の雇用規制の枠組みはもはや通用しない。

セレントは、かねてより規制緩和と技術革新は、イノベーションの機会でありドライバーであると提唱してきた。デジタル技術の普及は、技術革新面での可能性を高め、一方で、規制緩和は、革新的な技術の適用機会を提供する。

そして、成長戦略の加速要素として、新たなインセンティブプランの誕生に期待したい。ストックオプションに象徴される欧米型の株式報酬制度は、様々な弊害も持っていた。ここで日本型の新たなシェアプラン(組織業績と個人報酬の連動)を創造することができれば、デジタル技術を熟知し事業意欲の旺盛な企業家と、成長戦略をサポートする国家のイニシアチブとが両輪となり、イノベーションが加速するだろう。

 

(1) アベノミクス成長戦略の実行・実現について (日本経済再生本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/dai15/siryou3.pdf

(2) JA全中を「解体」 政府、改革期間3年に短縮 (日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO81656900X00C15A1EE8000/

(3) 年収1075万円以上の専門職対象 労働時間規制外す (日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H4P_X00C15A1MM8000

 

Eiichiro Yanagawa About Eiichiro Yanagawa

Eiichiro Yanagawa is a senior analyst with Celent's Asian Financial Services group and is based in the firm’s Tokyo office. His research focuses on IT strategy issues in the Japanese and Asian banking and financial industries. His recent research has included core banking systems, ATMs, anti-money laundering technology, electronic trading, document management, IT spending trends, and business process outsourcing. Eiichiro's consulting experience includes development of bank IT strategies, thin client / desktop virtualization to support business continuity, evaluation of data centers for hosting core systems, and vendor selection of AML, risk management, and other technologies.

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